破産を相談するタイミングはいつがよいですか?(法人編)
- カテゴリー:債務整理(個人) コラム
- 2021.02.15
債務整理について、素朴な疑問から専門的な論点まで、弁護士が解説いたします。
Q 経営している会社の業績が悪化し、赤字が続いています。
いつか弁護士に破産を相談することになると考えていますが、相談のタイミングはいつがいいのでしょうか?
A 赤字を解消できる見通しが立たなくなったら、なるべく早く相談されるのが良いでしょう
≪解説≫
1 破産は最後の手段
会社の営業赤字が続く場合でも、経営者の方は、事業の継続を望まれると思います。
ですから、まずは収益性の改善(業務改革、資金繰りの改善、赤字の解消)による企業再生を目指すことになります。
資金繰りが悪化しても、一時的なものであれば、銀行へのリスケジュールによって乗り切れるかもしれません。
赤字部門がはっきりしているのであれば、リストラ・部門閉鎖等、固定費を削減することで解決できる場合もあります。
しかし、こうした策を講じても赤字が解消できる見込みが立たないことがあります。
そうなると、残念ながら自力で事業を継続することは困難であると言わざるを得ません。
このような状況でも事業を継続しようとしたら、第三者によるテコ入れが必要です。
利益を出す事業部門があれば、M&Aを試みたり、民事再生手続を利用することが考えられます。
自力で事業継続ができず、第三者による救済の可能性もないということですと、客観的にみて、事業をやめざるを得ません。
事業をやめる際、会社が債務超過の場合、裁判所に自己破産を申し立てることになります。
破産により法人格は消滅しますから、企業再生の手段として、破産は最後の手段と言われています。
2 破産にあたって準備すべきこと
ここで、いざ破産をするとした場合、どのような準備が必要になるか、簡単に見てみましょう。
すでに事業を停止しているのであれば、とにかく速やかに破産の申し立てを行うことになります。
その場合、事業の概略や沿革、債務増加の経緯を整理したり、資産状況や負債状況を調査し、適切に破産管財人に引き継ぐ準備を行います。
これに対し、事業を継続している場合は、破産申立ての準備に加え、事業停止のタイミングを練ったり、従業員対応などを検討する必要があります。
いずれの場合も、お金の移動を厳密に管理しなければなりませんし、弁護士費用や予納金を確保できるか、という検討も必要です。
したがって、これらを十分に詰めておかないと、混乱をきたしたり、関係者に必要以上に迷惑をかけてしまう危険があります。
3 弁護士への相談はいつしたらよいのか
事業を停止しているのでしたら、可能な限り早く破産について相談したほうがよいでしょう。
時間の経過により、資料や協力者、破産費用が減っていくだけですから、まさに思いついたタイミングがベストということになります。
これに対し、事業を継続している場合も、資金繰りや赤字の問題が顕在化したら速やかに相談するのがよいでしょう。
経営者の方の中には、まずは事業再生のためにあらゆる手を尽くし、「最後の手段」である破産以外の選択肢がなくなって初めて相談をすればよいという考え方をする方もいらっしゃるでしょう。
しかし、事業再生を図るにせよ、結果的に事業を停止するにせよ、選択肢について予め把握しておくことは有益です。
というのも、いざ、破産以外の選択肢がなくなった際に、破産も困難という事態もあり得るためです。
そうなると、もはや身動きが取れなくなってしまいます。
また、無計画に事業を停止してしまうと、「2 破産にあたって準備すべきこと」で述べたとおり、関係者に混乱をきたしたり、必要以上に迷惑をかけてしまうかもしれません。
さらに、同時に代表者個人の破産を申し立てる場合に、会社再建のつもりで行った処理が原因で、破産免責に支障が生じてしまうかもしれません。
ですから、結果的に破産に至らなかったとしても、リスク回避のために相談をしておくことが有益であることは明らかです。
むしろ、事業再建のためにどこまでリソースを使ってよいか、といった線引きを行うことで、踏み込んだ方策を講じることができるかもしれません。
4 最後に
破産の相談をすることは恥ずかしいことではありません。
弁護士は多数の破産案件を取り扱っていますし、経営者の思いを理解してお話を伺います。
お世話になっている顧問税理士には話しにくいことでも、外部の弁護士であれば気兼ねなく話をすることができる場合もあります。
また、破産をするかわからないから、といって躊躇する必要はありません。
とりあえず、一つの選択肢として情報を得ておくことが損になることはありません。
相談をした方から、後日「なんとかなった」という報告を聞くことも少なくありません。
弁護士としても、相談者が破産をしないに越したことはないと考えており、無理に破産を勧めるわけでもありません。
苦境に立たされた経営者の方には、いちど弁護士にご相談いただくことをお勧めいたします。
(弁護士:小原将裕)