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保証人はどのような場合に消滅時効が援用できなくなりますか?

  • カテゴリー:債務整理
  • 2021.06.01

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債務整理について、素朴な疑問から専門的な論点まで、弁護士が解説いたします。

Q Aさんが主債務者、私が保証人になりました。主債務者が支払いを怠ったあと、長期間支払いをしていません。つい最近、債権者から電話があり、主債務者Aさんは承認してしまったようで、支払いを求められるようになりました。私はもう時効を援用することができなくなってしまうのでしょうか?私が承認してしまった場合は、どうでしょうか?

A 主債務者による承認が時効完成前であれば時効は中断(更新)されてしまい時効援用は認められませんが、時効完成後であれば時効を援用することができます。
 保証人が承認した場合でも、原則として上記のとおり主債務者の時効を援用することができます。


≪解説≫

1 承認について

 前回のコラムで、承認について触れましたので、簡単におさらいします。

 ・時効の完成前に承認をすると、時効の中断(更新)事由になります。

 ・時効の完成後に承認をすると時効援用権を喪失することになります。

 ・いずれの場合も、承認の時点から時効の計算がやり直しとなってしまい、時効援用が認められなくなります。

 それでは、保証人がいる場合は、どのように考えたらよいか、というのが今回のテーマです。

2 保証債務の時効について

 保証人がいる場合、主債務者が債権者に負う「主債務」と、保証人が債権者に負う「保証債務」が存在することになります。

 時効は、この「主債務」と「保証債務」のそれぞれについて考えます。

 保証人が時効を援用しようという場合、まずは「保証債務」の時効援用を考え、支障がある場合、主債務の時効援用を考えます。

■前提知識 保証債務の時効の起算点

まず、保証債務の消滅時効の起算点は、主債務の最終弁済時ということになります。
もちろん、保証人がその後に弁済した場合は、保証債務の最終弁済時となります。
まとめると、主債務または保証債務の最終弁済時が起算点ということになります。

承認について、債務者自身によることが必要と解されています(最昭62.9.3判決)から、主債務者による主債務の承認、保証人による保証債務の承認が問題となります。
そこで、整理すると、①誰が承認するのか、②時効完成の前か後かによって2×2の4パターンに分けて紹介します。

■パターン① 時効完成前に主債務者が主債務を承認した

時効完成前に主債務者が承認をすると、主債務の時効中断(更新)事由にあたります。
主債務の時効が中断(更新)されると、保証債務の時効も自動的に中断(更新)されます(最二小平5.9.13判決)。
したがって、時効完成前に主債務者が承認をしてしまうと、保証債務の時効援用は認められないことになります。
※ちなみに、前述の、保証債務の時効の起算点が主債務者の最終弁済時となっているのは、このルールがあるからです。

■パターン② 時効完成後に主債務者が主債務を承認した

時効完成後に主債務者が承認をすると、信義則により、主債務者は「主債務の」時効援用権を喪失します。
時効中断(更新)とは異なり、時効援用権の喪失の効果は相対的にしか発生しないものとされており、主債務者が主債務の時効援用権を失っても、保証人には影響しません。
したがって、時効完成後に主債務者が承認しても、保証債務の時効援用は認められることになります。

■パターン③ 時効完成前に保証人が保証債務を承認した

保証債務の消滅時効が中断(更新)し、時効援用が認められません。
※保証人が弁済すると、その時点が保証債務の時効の起算点とされるのはこのためです。

■パターン④ 時効完成後に保証人が保証債務を承認した

保証人は保証債務の時効援用権を喪失し、時効援用は認められません。

3 主債務の時効について

 保証人は、「保証債務」だけではなく、「主債務」の消滅時効も援用することができます。

 保証債務の時効援用ができない事情がある場合、「主債務」の時効を援用することができないかを検討することになります。

 これも、前述の4パターンに分けて考えてみます。

■パターン① 時効完成前に主債務者が主債務を承認した

 主債務の承認は、主債務の時効中断(更新)事由にあたります。

 主債務者に生じた時効中断(更新)事由は、保証人にも効果が及びます(民法457条1項)。

 したがって、保証人も時効中断を争うことができず、時効援用が認められません。

■パターン② 時効完成後に主債務者が主債務を承認した

 主債務を承認したことで、主債務者は、時効援用権を喪失したことになります。

 しかし、時効援用権の喪失の効果は、相対的にしか発生しませんから、保証人に影響はありません。

 その結果、保証人は原則どおり、主債務の時効援用権を行使することができ、時効援用が認められます。

 もっとも、主債務者が主債務を承認していることを知りながら、保証人も保証債務を承認した場合は注意が必要です。

 この場合、保証人は保証債務だけでなく、主債務についても時効援用権を喪失すると解されており(最昭44.3.20判決)、例外的に時効援用が認められなくなるためです。

 例えば、主債務者が時効完成後に弁済をしていることを知りながら、自分も弁済をしてしまったという場合には、保証人は、保証債務はもちろん、主債務の時効援用も認められません。

■パターン③ 時効完成前に保証人が保証債務を承認した
■パターン④ 時効完成後に保証人が保証債務を承認した

 保証債務の承認の効果は、主債務に及びません。

 したがって、パターン③、④ともに、保証人による主債務の援用に影響しません。

 なお、主債務者が主債務を承認していることを知りながら、保証人も保証債務を承認した場合には、例外的に時効援用が認められないのは■パターン②で述べたとおりです。

 このように、保証人が承認をしてしまっている場合でも時効援用の余地がありますから、諦めず、弁護士にご相談いただく価値は十分にあるといえます。

(弁護士:小原将裕)

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