会社が破産する場合、代表者も破産するしかないのでしょうか?
- カテゴリー:債務整理(法人・事業者) コラム
- 2021.09.15
債務整理について、素朴な疑問から専門的な論点まで、弁護士が解説いたします。
Q 会社が破産する場合でも、代表者は破産しないで債務を免除される方法はありませんか?
A 「経営者保証ガイドライン」を利用することができれば、破産を回避して債務を免除してもらうことができる場合があります。
<Point>
○会社が破産する場合、代表者も債務整理が必要なケースがほとんど。
○債務整理の方法には、破産のほかにも、「経営者保証ガイドライン」がある。
○「経営者保証ガイドライン」を利用すると、破産を回避したり、自宅を残すことができる場合がある
○恩恵を受けるには早い段階から準備が必要であり、早期に弁護士に相談をした方が良い
≪解説≫
1 会社の破産と代表者の債務整理
会社の経営が立ち行かなくなり、破産を迫られるケースでは、多くの場合、代表者もまた多額の負債を抱えています。
その多くが、会社の融資についての連帯保証債務です。
会社が破産しても、代表者個人の保証債務は免除されずに残ってしまいます。
そのため、最終的に代表者個人の保証債務を整理しない限り、借金苦からは逃れることができません。
2 破産以外にも債務整理の方法があります
従来は、代表者は会社とともに破産を申し立てる方法で保証債務を整理していました。
そして、それが唯一の債務免除の方法と語られてきました。
現在でも、そのように語る弁護士がまだ少なくないと聞きます。
しかし、破産という方法について、心理的に抵抗がある方もいらっしゃるかと思います。
破産による資格制限を受けてしまうと困る方もいるかもしれません。
また、破産手続では、代表者名義の自宅は売却されてしまい、家族の生活もままならなくなってしまいます。
このような事情があるため、代表者の方が、破産に踏み切ることができないケースも珍しくありません。
ですが、こうした心配を抱えた代表者の方も、債務整理を諦める必要はありません。
というのも、平成26年から「経営者保証ガイドライン」が適用されるようになったからです。
「経営者保証ガイドライン」を利用することができるケースでは、破産を回避して代表者の債務整理を行うことができるようになったのです。
この場合、破産を回避しながらも、一定の財産を残しながら、債務の免除を受けることができます。
3 「経営者保証ガイドライン」による債務整理の特徴
破産という方法も、法律で方式が厳格に定められていますし、裁判所も運用に習熟していますから、決して悪い手続ではありません。
破産も「経営者保証ガイドライン」も、事案によって使い分けようという発想になります。
★「経営者保証ガイドライン」のメリット
① 破産を回避し、精神的な負担や不名誉を回避することができます。
② 条件次第では、自宅を残すことができる場合があります。
③ 破産に比べ、手元に残すことのできる財産の範囲が増える場合があります。
④ 信用情報に事故情報が掲載されないとされています。
★「経営者保証ガイドライン」のデメリット
① 条件を満たしていないと利用することができません。
② 協議によるため、見通しが不確実です。
③ 破産と比べ、時間と費用がかかります。
④ 債務者の協力がより一層必要です。
「経営者保証ガイドライン」のおかげで、代表者の債務整理はハードルが下がり、間口も広がったといえます。
ただ、「経営者保証ガイドライン」を利用して十分な恩恵を受けるためには、かなり早い段階で準備を進めなければならないことが多いといえます。
というのも、「経営者保証ガイドライン」により合意するためには、破産手続の場合よりも、債権者にとって合理的であると判断してもらう必要があるためです。
例えば、破産手続における配当よりも多くの弁済を受けられるようなケースが挙げられますが、それなりに資産が残っている段階で、準備を始めなければならないことになります。
そうすると、実際には、会社の倒産をしようか続けようか、を迷われているくらいの段階から相談していないと、「経営者保証ガイドライン」は十分に力を発揮することができません。
4 「経営者保証ガイドライン」の利用を相談するには
「経営者保証ガイドライン」の利用を希望している場合、そもそも相談先を探すところから苦労することがありますし、いざ相談しても具体的な助言がもらえないこともあります。
商工会議所でも相談を受け付けていますが、破産手続などとの比較、制度の具体的な説明を受けたい場合は、弁護士に相談することが早道だと考えられます。
もっとも、「経営者保証ガイドライン」による債務整理を取り扱っている弁護士は少数です。
当事務所では、「経営者保証ガイドライン」による債務整理を希望する方の相談をお受けしており、実績もございます。
会社の破産を決意している必要はありませんから、是非、お早めにご相談いただけますと幸いです。
2021.9.15
(弁護士:小原将裕)