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会社の破産を考えたときにやってはいけないことは?

  • カテゴリー:中小企業法務
  • 2023.05.24

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債務整理について、素朴な疑問から専門的な論点まで、弁護士が解説いたします。

Q 会社の破産を考えています。注意すること、やってはいけないことはありますか?

A 実はたくさんあります。主なものとして、財産を流出させること、一部の債権者に支払や返済をすること、返済する意思なく借り入れをすること、破産について周囲に漏らすこと、嘘の説明をすること、などがあります。破産費用を残さないというのも問題です。

<Point>
○財産を保護し、破産管財人に引き継がなければならない。流出させると、民事、刑事の責任を負うこともある。
○破産にはまとまった費用が掛かるため、お金が底をつくまで経営を粘ってしまうと破産の選択肢がなくなってしまう。
○一部の債権者に支払や返済をしてはいけない。申立人にも返済を受けた債権者にも不利益になる。
○返済する意思がないのに借り入れをすることは、詐欺等に該当するおそれがある。
○破産の話を不用意に漏らさない。特に取引先や従業員には慎重になる。
○依頼する弁護士はもちろん、裁判所や破産管財人に対して嘘の説明をすることは禁忌。
○上記以外にも注意点は多数ある。早めに相談して、自分の会社にとって適切な対応を助言してもらうことが重要。


≪解説≫

1 破産が視野に入ったら

会社の資金繰りが危機に瀕したとき、破産が視野に入ります。

しかし、経営者の方の中には「破産は最終手段」「やれるだけやってダメになったら相談」という発想で、弁護士への相談を後回しにしてしまう方が少なくありません。

ところが、いざ弁護士に相談してみると、破産の選択肢がとれない、ということになってしまう場合があります。

そのため、早い段階で相談をしてほしいというのが弁護士の本音です。

もっとも、経営者の方にとっても心理的ハードルがあるかと思います。

そこで、相談前でも、破産という選択肢を失わないために、少なくともこれだけは守っておいてほしい、ということを解説していきます。

 

2 財産を流出・隠匿してはならないこと

⑴ 禁止される理由

破産手続では、破産者の財産は破産管財人に引き継いだうえ、金銭に換える必要があります。

財産を流出・隠匿することは、これを妨げることになるため、禁止されます。

違反すれば、民事、刑事の責任を負うこともありますし、代表者個人については、せっかく破産をしても、免責されず債務が残ってしまうこともあります。

そればかりか、全く資産がない状態では、弁護士費用や裁判所予納金を捻出することができず、破産の申立てすらできません。

⑵ 禁止されることの例

例えば、支払ができなくなってから、次のような行動をとることは問題があります。

・会社の預金を代表者や家族の預金口座に移してしまう
・現金や有価証券等を隠してしまう
・会社の資産を時価よりも低額で売却処分してしまう
・預金や現金が底を尽くまで粘ってしまう
・担保も取らずにお金を貸してしまう

 

3 一部の債権者に支払や返済等をしてはいけないこと

⑴ 禁止される理由

破産手続では、厳格なルールに従って債権者に配当が行われます。

このルールは、「債権者平等の原則」に従って設計されています。

これによれば、破産時に存在する財産は、破産管財人が換価し、債権額に応じて平等に配当されることになります。

ところが、一部の債権者に支払や返済をしてしまうと、返済を受けた債権者にとって利益に、他の債権者は不利になってしまい、債権者平等の原則を破ることになります。

ですから、破産を決意したり、支払不能となった後における弁済は禁止されています。

 

このような返済のことを、偏頗弁済(へんぱべんさい)といいます。

偏頗弁済があると、破産開始決定後、破産管財人が否認権という権限を行使し、弁済された金銭を債権者から取り立てることになります。

そうなると、債権者にしてみれば、結局返済分を取り返されてしまいますし、労力や精神的な負担が余分にかかることになります。

度を越して悪質である場合には、破産開始決定が出ない可能性も否定できません。

このように、申立人にとって不利益になるばかりか、返済を受けた債権者にとっても、かえって迷惑をかける結果になってしまいます。

 

なお、支払いや弁済のほか、贈与や担保設定なども、同様です。

⑵ 禁止されることの例

例えば、次のようなことは問題があります。

・破産を決意した後、下請業者に外注費を支払ってしまう
・資金繰りがショートした後、資産もないのに従業員に退職金を支払ってしまう
・破産を決意した後、世話になった人に多額の御礼やお祝いとして贈与してしまう
・支払いができなくなった後、債権者に会社資産を担保に入れてしまう
・債権者に代物弁済をしてしまう

  

4 返済する意思のない借入等をしないこと

破産をすると、最終的に債権者に対する支払義務がなくなることになります。

それをいいことに、もはや返済のあてもないのに借入れをすることは、詐欺等に該当する可能性があります。

そうなれば、会社だけでなく、代表者の方も民事・刑事の責任を負う危険があります。

 

5 取引先や従業員、金融機関等に不用意に知らせないこと

ニュース番組で、会社が突然破産をした、という報道を一度は目にしたことがあると思います。

路頭に迷った従業員が困ったと訴えたり、申立代理人弁護士が破産手続の中で行ってくださいとコメントしたりします。

このように、会社が破産申立を行い、裁判所から破産開始決定が出た段階で、事実が公になることが多いといえます。

 

秘密裏に破産申立てをすることについて非難する声も聞かれますが、オープンにすればよいというものでもありません。

オープンにした場合、上記の禁止事項が守られなかったり、債権者が押しかけたりして、財産や資料が確保できず、破産申立が困難になります。

本来、破産手続では債権者は平等に取り扱われますし、裁判所が関与することで公正性が確保されるのですが、こうした機会を妨げる結果になります。

また、仮にオープンにしたところで、債権者に支払いをできないことに変わりはありませんし、従業員の雇用関係を維持することもできません。

後ろめたさからか、オープンにしてしまった結果、破産申立ができなくなった事例について相談を受けることがあります。

こうした例では、破産できず会社を放置せざるを得ず、関係者に大きな迷惑をかけることになることを思い起こさねばなりません。

 

オープンにすべき案件かどうかは、弁護士が慎重に判断することになります。

混乱を生じやすくなるため、取引先や従業員などに対しては特に、不用意に知らせるべきではありません。

6 虚偽の説明をしてはいけないこと

破産開始決定が出ると、会社の権利義務は破産管財人が引き継ぎます。

会社の権利関係や財産状況について、裁判所に正確に報告しなければなりません。

会社名義の財産等も、破産管財人の管理下に置かれます。

そのために、資産価値のある財産は申立代理人の下で保管し、破産開始決定後、速やかに破産管財人に引き継ぐことになります。

 

ところが、虚偽の説明をしてしまうと、主にこれらに混乱をきたします。

正しい報告をしないばかりに、破産手続が難航したり、損害を生じさせてしまうことがあります。

代表者の方は、後ろめたさからか、虚偽の説明をしてしまうことがあります。

時には無意識に、取り繕ってしまったり、誇張を織り交ぜてしまうこともあります。

しかし、申立代理人や破産管財人は、会社を破産させることについて、代表者を責める気持ちはないと思われます。

ですから、代表者の方は、申立代理人や破産管財人に対しては、正しく事情をご説明いただきたいと思います。

7 最後に

以上に述べたものは、一般論であり、また、ほんの一例にすぎません。

会社によって、やってはいけないことは異なります。

また、上記にない行為であるからといって、一切問題ないということでもありません。

具体的にこの行為は禁止されるか、あの行為はどうか、という個別の判断も必要です。

上記の解説はあくまで簡易なものですから、慎重に事を運ぶためにも、早期に弁護士にご相談いただくのがよいといえます。

会社の破産を決意している必要はありませんから、是非、お早めにご相談いただけますと幸いです。

(弁護士:小原将裕)

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