【解決事例】公正証書で定めた養育費を調停にて減額した事例
- カテゴリー:離婚・不貞慰謝料
- 2022.01.07
ご依頼主: 40代 男性
依頼内容:養育費減額請求(調停)
ご相談内容
ご依頼主は数年前に離婚をしており、その際、公正証書にて離婚協議書を作成しました。
協議書では、養育費について、当時の収入をもとに算定した金額を支払うとの内容で合意されていました。
離婚から数年たち、依頼主は再婚し、子供も生まれたことから、養育費について見直したいと考え、どのようにすればよいか、相談にいらっしゃいました。
弁護士の対応とその結果
弁護士は、扶養の対象者が増えたことから、双方の収入が大きく変動していなければ、養育費の減額を求めることができる可能性があると説明しました。
そして、仮に調停が不成立であっても、審判によって減額が認められる可能性が十分にあったことから、まずは減額調停を申し立てるよう助言しました。
また、再婚相手の収入は扶養の範囲内でしたので、養育費の減額にあたって支障となる水準でもありませんでした。
もっとも、当事者同士の関係がこじれてしまっていることから、当事者同士で話し合うことは、たとえ調停手続であっても容易ではなく、弁護士が代理人として養育費減額調停の申立てを行いました。
やはり相手方は素直に応じず、生活に余裕がないとか、以前よりも勤務時間が減ったということを主張したため、その主張立証が問題となりました。
この点を争い、最終的には裁判所に理解をしてもらい、審判となった場合には減額が避けられないことを相手方に説得してもらうことに成功しました。
調停の途中で相手方が再婚し、子供も養子縁組をしたため、途中までは減額、養子縁組後は養育費の支払義務を免除、という形で段階的に養育費を減額する内容で合意が成立しました。
担当弁護士からのコメント
養育費減額請求は、子供のために使うことのできるお金を減らすことになりますから、非道な行いに思えるかもしれません。
特に、離婚して母子家庭となると、生活が余裕がないことが多く、確かに同情すべき部分もあります。
しかし、そちらを優先すれば再婚相手との子を劣後させることになってしまい、公平を損なうことになります。
母子家庭だから優先されるべきだ、というのは、一概に正しい考え方というわけではありません。
わが国の法制度は、収入が生活保護の水準を下回るような事態になるならば、それは社会保障によってカバーすべき問題とされています。
元配偶者に、本来政府が担うべき責任まで要求することを正当化することは困難と言わざるを得ません。
本件でも、相手方の主張の多くは法律論というよりも、情緒に訴えるものでした。
このような場合、スムーズに進めるためには、情緒に傾いた進行を避け、法律論に則った進行となるよう気を配る必要があります。
本件では、申立から調停成立まで約8か月程度かかりました。
養育費減額は、減額事由が生じたときから自動的に効力が発生するわけではなく、合意や調停、審判によって減額の定めが設けられない限り効力が発生しません。
しかも、減額事由にもハードルがあり、話し合いも容易には進まないことがほとんどです。
養育費の金額について、違和感を覚えた場合は、早期にご相談に来られることが望ましいといえます。
(弁護士 小原 将裕)