【解決事例】財産管理契約、任意後見契約、遺言書作成による生前対策を行った事例
- カテゴリー:相続・遺言 解決事案
- 2025.11.11
ご依頼 :50代 男性
依頼内容:生前対策(財産管理の委任契約、任意後見契約公正証書及び遺言公正証書作成)
ご相談内容
Aさんには、ご両親、配偶者、お子さんはいらっしゃいませんでした。ご兄弟はいらっしゃいましたが、20年以上会っておらず疎遠でした。
Aさんは、個人事業主として働いていましたが、すい臓がんに罹患し、医師から余命半年と宣告を受けてしまいました。
幸い、ご自身の加入していたがん保険で医療費や生活費は賄うことはできました。
しかし、入院中の財産管理や、体調が悪化した後の医療機関とのやり取り、死亡後の手続をしてくれる方がいません。
そこで、普段から親しくしており、すい臓がんが分かってからも通院に付き添い、何かにつけ支えてくれていた友人にこれらを頼みたいと思い、ご相談にいらっしゃいました。
弁護士の対応とその結果
Aさんと友人の方との間で、財産の管理や医療機関とのやり取り、施設への入所手続等ができるように契約書を取り交わすことにしました。
この契約は、Aさんの判断能力の段階に応じて異なるかたちで行うことになります。
Aさんが判断能力を失い後見開始に備えた任意後見契約、任意後見の前段階の財産管理の委任契約をそれぞれ公正証書にて作成しました。
また、亡くなった後の手続に備えて、遺言書を作成しました。
これにより、生前には金融機関との取引、病院での医師との面談対応、亡くなった後には死亡届の提出や火葬、永代供養、死後の金融機関の解約手続まで、すべて友人が責任をもって行うことができるようになりました。
Aさんは、ご自身の体調が悪化した後や亡くなった後の不安がなくなり、療養に専念できる環境が整ったことを安心していらっしゃいました。また、遺言を作成したことで、非常に親身になってくれた友人に少しでも遺産を渡すことができることを、喜んでおられました。
Aさんの友人も、Aさんを支えたいものの、どこまで踏み込んでいいのか悩むこともあったそうですが、財産管理委任契約、任意後見契約で委任事項をはっきりさせ、Aさんの気持ちを形にしたことで、対応しやすくなったそうです。
弁護士からのコメント
本件のAさんのように、今後、頼ることのできる親族がいないという方は増えていくと考えられます。
幸いにも、Aさんのように、親身になって対応してくれる方がいる場合でも、その方に法律上の権限がないため問題が生じる場面は多々あります。
例えば、死亡届の提出は、戸籍法上、届出義務者として、①同居の親族、②その他の同居者、③家主、地主又は家屋若しくは土地の管理人(戸籍法87条1項)が定められ、届出ができる者として、④同居の親族以外の親族、⑤後見人、保佐人、補助人、⑥任意後見人及び任意後見受任者が限定列挙されています(戸籍法87条2項)。そのため、単なる友人・知人は被相続人の同居者等でなければ死亡届を提出することはできません。
このような場合に備え、任意後見契約を作成しておけば、任意後見人又は人後見人受任者が死亡届を提出することができ、その後の葬儀や埋葬許可の申請などの手続きを進めることができます。
生前に自身の気持ちを明らかにしておくこと、それを適切な形式で残しておくことが、ご自身の希望に沿ったエンディングにつながります。一度ご相談ください。
(弁護士:橋本 友紀子)