【解決事例】兄弟に着服された被相続人の預金を取り戻した事例
- カテゴリー:相続・遺言 解決事案
- 2021.05.12
ご依頼主: 60代 女性
依頼内容:相続財産調査、遺産分割調停、不当利得返還請求訴訟
ご相談内容
Aさんの母親は、生前、Aさんとは別の都道府県に住んでおり、Aさんの兄も同じ県に住んでいました。
兄は、自分が選んだ介護施設に母親を入所させ、母親の財産も全て管理していました。
数年前、Aさんは、母親を自宅で介護したいと兄に申し出ましたが、兄は、Aさんの申し出を断っていました。
母親が亡くなったので兄に相続の話をしたところ、「介護にお金がかかったので財産はほとんど残っていない。」と言われ、数ある預金口座のうち、年金が振込まれる通帳しか見せてもらえませんでした。
兄に不信感を募らせたAさんは、弁護士に相談することにしました。
弁護士の対応とその結果
弁護士は、Aさんの依頼を受けて、複数の金融機関に母親の預金口座の有無や取引履歴の調査を行いました。
その結果、Aさんの母親の口座からは、死亡前10年間で、7000万円以上の引き出しがあったことがわかりました。
そこで、弁護士は、遺産分割調停を申し立て、不動産の分割とともに、兄に7000万円以上の使途を追及し、Aさんの相続分の支払いを求めました。
ところが、兄は、引き出した金の一部は母のために使い、残りは母から贈与を受けたので一切渡さないと主張して譲らず、合意に至りませんでした。
遺産分割調停で決着がつかない場合、預金の着服の問題は民事訴訟で解決することになります。
そこで、使い込みが不当利得になるとして、不当利得返還請求訴訟を提起しました。
まず、弁護士は、Aさんの母親が入っていた施設の利用料金や医療費、介護の資料や交通費などの徹底的な調査を行いました。
訴訟では、弁護士は、調査結果を踏まえ、母のためにかかった費用が高額ではないこと、母親が兄に多額の贈与をする動機がないこと、兄の説明には不自然な点が多いことなどを指摘しました。
そして、使途の説明が合理的ではなく、辻褄合わせに過ぎないものが大半であると主張しました。
訴訟を継続し、証人尋問を終えたところで、裁判官から、合理性のある使途を認める一方で、兄に対する贈与の大半は疑義があるとして、兄からAさんに一定額を支払う内容の提案がありました。
結局、兄がAさんに2500万円近くを支払う内容で和解が成立し、本件を解決することができました。
担当弁護士からのコメント
Aさんのように、お亡くなりになった方の財産の状況がわからない場合、金融機関に財産の有無を照会することができます。
ご自身で照会することも可能ですが、届いた書類の内容を確認し分析することは、専門家に依頼すると安心です。
今回のケースのように、兄弟姉妹がほぼすべての事情を知り証拠を持っているのに対し、自分は事情を一部しか知らず、証拠もほとんど持っていないということはよくあります。
遺産分割調停の中で、誠意をもって説明を尽くそうとする相続人であれば話は進めやすいのですが、本件のように不誠実な対応に終始する相続人ですと、難航してしまうのが実情です。
本件では、調停から訴訟を通じ、兄が情報開示を行わなかったため、弁護士が、母親のために使った費用を調査したり、贈与であれば本来あるはずの書類や手続が存在してないことを指摘するなど、戦略的に裁判官を説得し、結果として贈与を認めない内容で和解することができました。
(弁護士:橋本友紀子)