【解決事例】不動産会社の法人破産を申し立てた事例
- カテゴリー:債務整理(法人・事業者) 解決事案
- 2022.07.28
ご依頼主:浜松市内の株式会社
依頼内容:自己破産(法人破産)
ご相談内容
ご依頼主は、不動産に関連する事業を中心に取り扱う株式会社です。
比較的若い会社であり、時流に合わせて事業内容を変えながら事業を続けてきました。
当初こそ利益を上げていましたが、流行のサイクルが早く、業績が悪化してしまいました。
代表者はもちろん、親族やその会社から多額の資金援助を受けて再起を図っていました。
ところが、リスクのある商材に手を出し、取引に失敗した結果、多額の負債を抱えることになりました。
客観的に見て、収支が黒字に転じたとしても、財務状況の回復には膨大な時間がかかるような状態でした。
代表者は事業の継続を迷っていましたが、親族からの説得もあり、会社の破産を決意しました。
弁護士の対応とその結果
まず、破産申立の費用を賄うことができなかったことから、相談を受けた弁護士とともに、残された不動産の売却を検討しました。
売却価格について詳細に吟味、検討したうえで、身内の方に時価相当額で購入してもらうことができました。
これによって、破産申立費用を確保することができました。
ご依頼主の会社には従業員が在籍していました。
破産に伴い、解雇や各種書類の発行、引継ぎを行う必要があります。
突然に生活の糧を失うことになりますので、従業員から反発等を受けることがあります。
本件では、会社の業績が悪いことは従業員の目にも明らかであったことから、破産することへの驚きもなく、穏便に手続を進めることができたのは幸いでした。
また、顧問税理士にも多大な協力をしていただくことができ、円滑に進めることができました。
取引先にも負債を抱えていましたが、比較的規模の大きな会社であったこともあり、こちらも反発はほとんどありませんでした。
最終的に、破産手続が終了し、無事に会社は清算を終え、消滅しました。
★債務の減額 約9900万円⇒0円(法人消滅)
担当弁護士からのコメント
申立費用捻出のための売却
本件のように、破産申立の費用すら捻出することができない場合は珍しくありません。
そのような場合、まずは保険契約や定期預金等の時価と額面がほぼ一致する資産を現金化します。
それも難しい場合には、在庫等の売却を行わざるを得ない場合があります。
もっとも、不用意に売却を行うと、裁判所から資産の流出と指摘されることがあります。
場合によっては売却先に返還請求が行われるなど、大変な迷惑が掛かりますし、破産手続の帰趨にも致命的な影響を与えることがあります。
したがって、金額や条件などについては、慎重な吟味が必要となりますから、必ず弁護士の指導の下で行うようにしてください。
本件では、売れ残った在庫の不動産を売却することにしました。
売れ残っている以上、需要は乏しいのですが、勝手に値引きするとなると破産手続の上では難があります。
そのため、近隣の取引価格から時価を算出し、その金額で身内の方に買い取っていただきました。
最終的に裁判所からも問題視されることなく、申立費用を捻出し、手続を完了することができました。
従業員への対応について
確保した預金が破産申立費用や清算のための実費よりも多い場合、配当が行われます。
このような場合、従業員の方に対しては、申立前に一定の支払いを行うことがあります。
解雇予告手当や未払給与の処理など、考え方が分かれる部分はありますが、本件では、解雇予告手当を支払い、未払給与については未払賃金立替払制度を利用することで、従業員に対して最大限に配慮されたかたちで給与等を清算しました。
最後に、経営者に向けて
代表者の方は、業績悪化を受けて、精神的に相当堪えている様子でした。
破産についても、親族の方の献身的な説得を受けて、ようやく決意に至りました。
経営者として、撤退の決断は勇気が必要ですし、冷静な判断力がなければなりません。
その意味で、最後の最後まで味方になってくれた親族の方の存在は非常に大きいものでした。
このまま事業を継続してしまっていたら・・・
換価する財産もなく資金が目減りしてしまっていたら・・・
代表者を助けてくれる人が離れて行ってしまっていたら・・・
ということを考えると、本件のタイミングで破産を申し立てる決意をすることができたのは、会社にとっても大変良かったと思います。
事業継続に迷われた場合は、相談が早すぎるということはありません。
経営者の方も、一人で抱え込まず、是非お気軽にご相談ください。
(弁護士 橋本 友紀子)