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【解決事例】両親が亡くなってから数年後の督促をきっかけに相続放棄の申述をした事例

  • カテゴリー:相続・遺言 解決事案
  • 2023.06.06

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ご依頼主 :50代 女性

依頼内容:相続放棄申述事件

ご相談内容

Aさんのご両親が死亡して数年たった後、突然、保証債務の支払いを求める通知文が届きました。

通知文によれば、Aさんが知らない間に、お父様が別の親族の保証人になっており、今般、主債務者が支払いを遅滞したため、請求をしたというものでした。

また、請求金額は合計1000万円近くに上りました。

Aさんは、相続から数年たった後のことであり、また、主債務者である親族の方も「Aさんに迷惑をかけないから」と言っていたので、無視しようとしていました。

これを心配したAさんの配偶者様から電話していただき、Aさんも念のため、と思いご相談にいらっしゃいました。

弁護士の対応とその結果

相続放棄の申述は、被相続人の「相続の開始を知った日」から3か月以内の熟慮期間内にしなければなりません。

原則として、熟慮期間は死亡の事実を知った日から起算されます。

しかし、例外的に、被相続人に相続財産が全く存在しないと信じ、そのように信ずるについて相当な理由がある場合には、熟慮期間は相続人が相続財産の全部又は一部の存在を認識した時又は通常これを認識することができた時から起算すると解されています。

話を聞いてみると、確かに、Aさんは保証債務があることを知らず、認識することも困難であったと思われる事情がありました。

そのため、通知が届いた日を「相続の開始を知った日」と見て、熟慮期間を起算することが可能と考えられました。

 

もっとも、通知が届いてからすでに2か月がたっていました。

いくら死亡の事実を知った日から熟慮期間を延ばすことができても、そこから3か月が経過してしまっては相続放棄ができません。

しかも、被相続人の最後の住所地はかなり遠方であり、余裕をもって申述書を発送する必要があります。

そこで、急ピッチで必要書類や、例外を認めてもらうための裏付資料の収集を行い、なんとか期限直前に、家庭裁判所に相続放棄を申述しました。

 

最終的に、無事に相続放棄申述は受理されました。

債権者対応もご依頼内容に含まれていましたので、債権者に対しても必要書類を送付し、事情を説明することで、Aさんへの請求を取りやめてもらうことができました。

弁護士からのコメント

熟慮期間の起算点について例外があることについては広く知られているように思われます。

もっとも、裁判所も、熟慮期間の例外は簡単に認めてくれるわけではありません。

単に相続財産の存在を知らなかっただけでは足りず、知らなかったことにつき相当な理由が要求されています。

例外を認めてもらうためには、これらの事情があることが絶対に必要であり、さらに、一定の裏付に基づいて事情説明をすることも必要となります。

そのため、本人が自力で申述するにはハードルが高くなります。

 

また、被相続人の債務について心当たりがない方の中は、何かの間違いではないかと無視したり放置してしまう心境になる方もいるようです。

しかし、無視してしまうとかえって事態が悪化し、法律的にいかんともしがたい事態になりかねません。

被相続人名義の負債については、架空請求などの詐欺とは正反対の対処が必要になります。

被相続人名義の負債について身に覚えのない請求があったら、債権者とコンタクトをとる前に、速やかに弁護士に相談するようにしましょう。

(弁護士:小原 将裕)

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