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保険会社にはどのように対応すればよいですか??

  • カテゴリー:交通事故 コラム
  • 2021.01.28

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交通事故について、素朴な疑問から専門的な論点まで、弁護士が解説いたします。

Q 保険会社から連絡がきました。適切な賠償を受けるためには、どのように対応したらよいでしょうか?保険会社との対応のコツを教えてください。

A 対応にあたっては、①~⑥をまず押さえておくことが有益です。

① 賠償は原則として症状固定から
② 症状固定前に支払われるお金もある
③ 内払いの打切りを争うには
④ 親切な担当者でも提示額は控えめな理由
⑤ 任意基準を上回る提案をさせるには
⑥ 保険会社との交渉に裏技はない


≪解説≫

 被害者が任意保険会社に加入していない場合や、過失割合が100:0の場合は、示談交渉まで相手方保険会社とやり取りをする必要があります。

 交通事故に遭って、ただでさえ負担がある中で、交渉をすることにご不安を感じていることと思います。

 適切な賠償を受けるため、保険会社とのやり取りにおいて注意しておくべき点をご説明します。

1 賠償は原則として症状固定から

 事故後、すぐに賠償額の提示があるかというと、そうではありません。

 治癒するか、症状固定と後遺障害認定がなされたところで賠償額の算定が可能になりますので、その時点から協議が始まります。

 ちなみに、「症状固定」とは法律用語であり、医学用語ではありません。

 治療を継続しても治療の効果が上がらないとされることをいいます。

 損害賠償請求において、この症状固定日がいつかは非常に大きな意味を持ちます。

 というのも、治療費や休業損害、障害慰謝料の基準となるためです。

2 症状固定前に支払われるお金もある

 とはいえ、損害のすべてが症状固定後に清算されるわけではありません。

 ほとんどの場合、治療費をはじめ、保険会社が内払いを行います。

 この場合、通院しても治療費の支払いをしなくてよいことになります。

 また、治療費以外にも、交通費、入院雑費、休業損害等については、保険会社から内払いがなされることがあります。

3 内払いの打切りを争うには 

 ちなみに、治療費の内払をいつまで続けてもらえるのか、ということがしばしば問題となりますので、ここで触れておきます。

 例えばむち打ちでは3~6か月といったように、類型によってある程度の目安があります。

 症状が治まっているのであれば問題ありませんが、自覚症状が続く限りは、被害者としては、治療を続けたいでしょう。

 また、その費用を自分が立て替えるのではなく相手方が負担するのは当然と感じられますよね。

 ところが、治療費は、症状固定(完治を含む)までの期間の診療報酬を意味します。

 したがって、症状固定日以降の通院については、保険会社には負担する義務がないのです。

 どうしても通院を続け、かつ、保険会社に治療費を負担してもらいたいという場合には、保険会社が主張する症状固定日を争うことになります。

 もっとも、治療費の負担義務を負うことと、内払を続けることとは、別問題です。

 というのも、内払いは保険会社があくまでサービスとして行っているものであり、法的義務というわけではありません。

 症状固定ではないといって診療報酬を払い続けていたが、あとで見たら本来負担する義務のないものだった、というわけにもいかないのです。

 また、治療の効果が上がらなくなってきても、医師は「治療を続ければ治る可能性はゼロではない」という言い方をされると思います。

 実際、これが患者に対して最も誠実な回答といえます。

 ところが、理屈としては、通院をしている限り、このような状態が続くことを意味してしまいます。

 医師の意見を聞く際は、この点を念頭に置く必要があります。

 保険会社は、可能な限り客観的・第三者的に症状固定を判断しようとします。

 打ち切りにあたっては、多くの場合、顧問医の意見を聞いたり、主治医に照会をかけたりと、一応医学的な根拠に基づいて判断しています。

 このような医師の立場、保険会社の立場を踏まえると、治る可能性があるから治療を続けたいと言って症状固定日を争うとしても、その根拠について十分吟味する必要があります。

 また、保険会社が治療費分の損害を賠償することと、サービスである内払を続けるかどうかとは別問題なのです。

 最終的に保険会社が負担することになったとしても、それまで治療費を立て替える覚悟が必要な場合があります。

4 親切な担当者でも提示額は控えめな理由

 症状固定後、後遺障害等級認定が出ると、保険会社との示談交渉が始まります。

 担当者は、通常、被害者に対して親切に接するように努めます。

 加害者の交渉代行という立場もありますが、不用意な発言で紛争を激化させることを回避するという実益もあります。

 担当者は親切ですから、示談交渉の際に提示される賠償額についても、法的に認められる上限の額を提示してくれていると考えてしまいます。

 確かに、治療費や実費、休業損害等は満額が計上されていることが大半ですし、1円単位でしっかりと計算してくれていますので、そのように考えても無理もありません。

 しかし、後述するように、慰謝料や逸失利益については必ずしも適正な額とは言い切れません。

 そして、賠償額の大半を占めるのが、この慰謝料と逸失利益なのです。

 ですから、保険会社の提示額でそのまま合意することは、多くの場合、適正な賠償を受けられないことを意味します。

 それでも、保険会社の提示額に異議をはさむことに躊躇してしまう方もいらっしゃるかもしれません。

 それは、担当者への信頼を裏切るのではないかという懸念や、これまで親身になってくれたという遠慮からかもしれません。

 しかし、保険会社は、被害者からの増額請求を織り込んだ金額を提示しています。ですから、増額を求めたからといって、親切にしてくれた担当者の面目をつぶすことになるわけではありませんし、後ろめたく感じる必要もありません。

 また、保険会社の人事事情から、交渉や訴訟の途中で担当者が交代してしまうことも多々あります。

 途中で交代した担当者は、通院の打ち切りや示談交渉という緊張感のある立場ばかりを任されがちです。

 初期対応と比べて親切ではなくなった、と感じる方も少なくありません。

 実際に、担当者の態度が誠意を欠く、といった理由でご相談にいらっしゃる方は一定程度いらっしゃいます。

 そのような場合にも、保険会社から賠償額が提示されていることが多々あります。

 実は、提示された内容は親切な担当者の場合とさほど変わらないことが多いのです。

 このように、保険会社の提示額は、控えめな算定がなされています。これは、結局、任意基準という独自の基準をもとに賠償額を提示しているからです。

5 任意基準を上回る提案をさせるには

 裁判基準とは、弁護士や裁判所が慰謝料を算定する際に参照する基準のことです。

 通称「赤い本」「青い本」と呼ばれる書籍に掲載されています。

 裁判所も参照する基準ですから、判決が出たら認められる金額に近い基準です。

 これに対して、保険会社は、任意基準という独自の基準を使って算定・提案してきます。

 これは内部基準にすぎず、法的拘束力もありません。

 裁判を行った場合に比べ、総じて低い金額になります。

 ですから、保険会社の示す内容に納得がいかず、裁判基準のほうが高額だと判断した場合、訴訟を提起することになります。

 もっとも、弁護士が介入することで訴訟提起前であっても基準が引き上げられることもあります。

6 保険会社との交渉に裏技はない

 保険会社の提示する賠償額は上記のように決まってきます。

 そうすると、交通事故による損害賠償請求にあたって、いたずらに自分の境遇について述べたり、相手方の不誠実さを糾弾しても、(中には多少の譲歩を引き出すことができる場合もあるかもしれませんが、)必ずしも交渉がうまくいくわけではないことがわかると思います。

 どこまで説得的な論理と根拠を示すことができるか、労を惜しまずに裁判ができるか、という二点が交渉において重要な要素となります。

 結局、保険会社との交渉にあたっては、裏技というようなものはなく、王道を外さないこと、つまり的確な主張立証を行い、裁判基準に持ち込むことが、増額交渉のコツということになるのです。

(作成:弁護士 小原将裕)

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