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相続分はどのように計算したらよいですか??

  • カテゴリー:相続・遺言 コラム
  • 2021.07.09

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相続について、素朴な疑問から専門的な論点まで、弁護士が解説いたします。

Q 相続順位が同じなら法定相続分も同じのようですが、遺言で指定されている場合や、生前贈与の不公平があるような場合も一切考慮されず一律なのでしょうか。最終的な相続分はどのように計算したらよいでしょうか。

A 最終的な相続分である「具体的相続分」を計算するにあたって、生前贈与などが考慮されることがあります。

<Point>
○遺言で指定されている場合は、指定された相続分による
○生前贈与等が特別受益にあたる場合は遺産に含めて計算する

○寄与分は遺産から控除して計算する
○算出した「みなし相続財産」に「法定相続分」を乗じて「具体的相続分」を計算する


≪解説≫

1 登場する用語

 まずは用語を確認しておきます。もっとも、実際に具体例を考えた方がわかりやすいと思いますので、まずは2、3を読み進めるのが良いと思います。2、3を読むうちに、用語がわからなくなったら、その都度こちらに戻って整理し、理解を深めていただくとよいと思います。

①「相続分」

 「相続分」とは、相続財産の総額に対する、各相続人が取得することができる割合のことをいいます。

 多くの場合、相続分の割合は、法定相続分と同じになります。

 遺言で相続分が指定されている場合、この指定相続分によります。

例えば、Aの相続分は1/2、Bの相続分は1/4、Cの相続分は1/4などと表現します。

②「みなし相続財産」

 「みなし相続財産」とは、全ての遺産の評価額に、全ての特別受益額を加算し、全ての寄与分額を控除した価額をいいます。

 <参考>

  ※特別受益についてはこちら(⇒「どのようなものが特別受益にあたりますか?」参照)

  ※寄与分についてはこちら(⇒「寄与分は遺産分割でどのように考慮してもらえますか??」参照)

 なお、これらはいずれも相続開始時の評価額であることに注意が必要です。

【相続開始時の全遺産評価額】+【全特別受益】-【全寄与分】
 =【みなし相続財産】

例えば、遺産総額4000万円、特別受益額2400万円、寄与分額400万円の場合、みなし相続財産は、4000万+2400万-400万=6000万(円)となります。

③「具体的相続分」

 「具体的相続分」とは、みなし相続財産に相続分を乗じ、寄与分や特別受益の計算をした後の金額のことをいいます。

【みなし相続財産】×【各相続分】-【各特別受益】+【各寄与分】
=【各具体的相続分】

 ①の相続分や、法定相続分と異なり、この具体的相続分は金額で表現します。

例えば、相続人Aの具体的相続分は600万円、Bの具体的相続分は1900万円、Cの具体的相続分は1500万円などと表現します。

2 特別受益・寄与分がない場合の計算

 特別受益(生前贈与など)や寄与分(療養看護など)がない場合、計算式を簡略化することができます。次のようにまとめられます。

 【各相続人の相続分】=【全遺産の評価額】×【各相続人の法定相続分】

3 特別受益・寄与分がある場合の計算

  算定式は次のようになります。

<算定式>
①【相続開始時の全遺産評価額】+【全特別受益】-【全寄与分】
=【みなし相続財産】
②【みなし相続財産】×【各相続分】-【各特別受益】+【各寄与分】
=【各具体的相続分】

 個々の案件に算定式を適用する前に、一度、具体例を見ておきましょう。

例えば,次のような場合を見てみましょう。
<事案>
・相続人は配偶者A、子B、子Cの3名
・全遺産の相続開始時・遺産分割時の価格が4000万円
・Aの特別受益が2400万円
・Bの寄与分が400万円
<考え方>
・①のとおり、みなし相続財産を求めます。遺産総額4000万円、全特別受益額2400万円、全寄与分額400万円ですから、みなし相続財産は,4000万円+2400万円-400万円=6000万円です。
・Aの相続分は1/2、Bの相続分は1/4、Cの相続分は1/4です。
・②のとおり、それぞれの相続人について、各具体的相続分を求めます。
 Aの具体的相続分は6000万円×1/2-2400万円=600万円
 Bの具体的相続分は6000万円×1/4+400万円=1900万円
 Cの具体的相続分は6000万円×1/4=1500万円
・各具体的相続分の合計4000万円は、遺産総額4000万円と一致します。遺産分割時の遺産評価が相続時と変わらなければ、遺産総額4000万円を、Aが600万円、Bが1900万円、Cが1500万円をを取得するよう分割することになります。

4 複雑なケース①:超過特別受益がある場合

 ここからは、非常に複雑な考え方を必要とする場面の解説を行います。
 どの数字がどの概念に対応するのか、正確に把握していないと、計算式に当てはめることができません。

 複雑なケースその1は、「超過特別受益」があるケースです。

 「超過特別受益」とは、ある相続人の特別受益の価額が多いため、その相続人の具体的相続分がゼロを下回るに至るものをいいます。

<考え方>

 遺産分割は、あくまで相続財産を分配する制度です。

 本来の具体的相続分よりもたくさんの特別受益があったからといって、超過特別受益者が超過分を返金したりするわけではなく、その他の相続人で残りの遺産を分けるという考え方が取られています。

 もし、他の相続人から見て不公平があまりに大きい場合は遺留分の問題として解決すべきで、そこに至らない場合は、他の相続人が不公平を被る、というのが現行の民法の制度です。 

※他の相続人から見たら、不公平な制度と映ると思います。反対に、被相続人や特別受益者からは、自由が尊重された制度に見えると思います。

<計算式>

複雑ですから,具体例の中で見てみます。

例えば,次のような場合を見てみましょう。
<事案>
・相続人は配偶者A、子B、子Cの3名
・全遺産の相続開始時の価格が4000万円
・Aの特別受益が2400万円
・Bの寄与分が2000万円
<考え方>
・具体的相続分の算定式①のとおり、みなし相続財産を求めます。遺産総額4000万円、全特別受益額2400万円、全寄与分額2000万円ですから、みなし相続財産は4000万円+2400万円-2000万円=4400万円です。
・Aの相続分は1/2,Bの相続分は1/4,Cの相続分は1/4です。
・具体的相続分の算定式②のとおり,各具体的相続分を求めます。
Aの具体的相続分は4400万円×1/2-2400万円=-200万円
Bの具体的相続分は4400万円×1/4+2000万円=3100万円
Cの具体的相続分は4400万円×1/4=1100万円
・この場合,Aは200万円をもらいすぎということになりますが,これを返金する必要はありません。つまり、具体的相続分を0として分割方法を決めることになります。
・遺産を分ける制度ですから、各具体的相続分の合計は、遺産総額と一致します。
そうすると、計算上は,他の相続人BCで、Aのマイナスを引き受ける必要があります。
・Aのマイナスは、BとCの具体的相続分の比率に応じて分配します。
Bが3100万円、Cが1100万円、合計4200万円ですので、Bが3100万/4200万、Cが1100万/4200万の割合で、Aのマイナスを引き受けます。
Bによる超過分負担は200万円×3100万/4200万=約148万円
Cによる超過分負担は200万円×1100万/4200万=約52万円
・マイナスを引き受けた結果,具体的相続分も,修正されます。
 Bの具体的相続分は3100万円-148万円=2952万円
 Cの具体的相続分は1100万円-52万円=1048万円
・遺産総額4000万円を、Bが2952万円、Cが1048万円を取得するよう分割することになります。

5 複雑なケース②:遺産評価額に変動がある場合

 複雑なケースその②は、遺産評価額に変動があるケースです。

 相続発生から遺産分割まで非常に時間が空いている場合、不動産の価格や、場合によっては現金の価値まで、相続発生時と遺産分割時との間で遺産評価額が異なる可能性があります。

 具体的相続分は、相続発生時の遺産評価額をもとに計算されます。

 相続発生時と遺産分割時とで遺産評価額が同一であれば、具体的相続分の金額に従って遺産を分ければ足ります。

 ところが、相続発生時から遺産分割時までの間に遺産評価額が変動している場合、各相続人の具体的相続分の合計が、遺産評価額と一致しなくなります。

 そのため、この変動を考慮して各自の取得額を定め、個々の遺産の取得方法を検討することになります。

<考え方>

 具体的には、具体的相続分総額に占める各相続人の「具体的相続分率」を計算します。

  【各人の具体的相続分】÷【具体的相続分の総額】=【具体的相続分率】

 これを、遺産分割時における遺産総額に乗じたものが、各相続人の取得額となります。

  【遺産分割時の遺産評価額】×【各具体的相続分率】=【各取得額】

 各取得額に基づいて、誰がどの遺産を取得し、いくらの代償金の支払いを行うか、ということを協議することになります。

(弁護士:小原将裕)

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