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親子関係の不存在はどのように争えばよいですか

  • カテゴリー:相続・遺言
  • 2022.05.20

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相続について、素朴な疑問から専門的な論点まで、弁護士が解説いたします。

Q 戸籍上は夫婦の子となっていますが、実の親子でないことがわかりました。法律上の親子関係がないことをどのように争えばよいですか。

A 嫡出否認の訴えまたは親子関係不存在確認の訴えによって、生物学上の親子関係不存在を立証し、法律上の親子関係を否定する必要があります。

<Point>
○生物学上の親子関係と法律上の親子関係が一致しないことを民法は認めている。生物学上の親子関係がないからといって、当然に法律上の親子関係がないということにはならない。
○嫡出が推定される場合は嫡出否認、それ以外の場合は親子関係不存在確認の裁判を行う必要がある。
○嫡出否認の場合、子の出生を知ってから1年以内に裁判を起こさなければ親子関係を争うことができなくなる。
○どちらの類型の裁判においても、生物学上の親子関係がないことを立証する必要がある。


≪解説≫

1 親子関係の不存在が争われるケース

法律上の親子関係があることは、扶養関係や相続人の範囲を確定する場面で、重要な意味を持ちます。

しかし、血縁上の親子関係が、必ずしも法律上の親子関係と合致していないことがあります。

実の親子だと思っていたのに、生物学上の親子関係がないというケースでは、離婚や相続の紛争に関連して、親子関係の不存在が主張されることがあります。

<例>
未成年者Aは夫と妻の子として戸籍に記載されている。妻がBと不貞関係にあったことが発覚したので、DNA鑑定を行ったところ、Aは妻とBの子であることが判明した。夫は妻に対し、「Aは自分と血のつながりがはない。親子関係がないから扶養義務もない。」と主張。

<例>
AとBが両親の相続について争っている。BがAに対し「両親はAと血のつながりがなく、親子関係はない。Aは両親の相続人にあたらないから、両親の遺産を取得する権利はない。」と主張。

 

2 法律上の親子関係

血のつながりがないからといって、直ちに親子関係がないということにはなりません。

というのも、民法では、「生物学上の親子関係」と「法律上の親子関係」が区別されるからです。

実は、民法では、法律上の親子関係と生物学上の親子関係とが一致しない場合があることは、初めから想定されているのです。

母と子の法律上の親子関係は、分娩の事実により発生します(最高裁昭和37.4.27判決)。

通常、そのまま届出がなされますから、基本的には血縁上の親子関係=法律上の親子関係と言うことができます。

(もっとも、代理出産などの人工生殖医療の発達により「血縁関係」という言葉だけで説明にするには限界があるところであり、法整備の必要性が指摘されているところです。)

 

これに対し、父と子の法律上の親子関係は、
・婚姻している母から生まれた子については、嫡出推定(民772条)
・婚姻していない母から生まれた子について、は認知(民779条)
によって発生します。

嫡出推定では、婚姻時期と懐胎の時期のみによって父子関係が定められており、血のつながりを問題としていません。

そのため、法律上の親子関係が血縁上の親子関係と一致しないケースがそれなりにありえてしまうのです。

こうしたケースのために嫡出否認の規定が設けられており、親子関係を争うことが初めから想定された制度設計となっているのです。

 

3 親子関係の不存在を争うための手続

扶養(養育費分担請求など)や相続(遺産分割請求など)は、それぞれ家庭裁判所で調停や審判手続が設けられています。

通常はこのような紛争に絡めて親子関係が問題となることから、これらの調停や審判の中で親子関係の不存在を主張すれば十分だと思われるかもしれません。

しかし、法律上の親子関係は、様々な場面で様々な人に影響を及ぼすことになります。

そこで、親子関係の存否を争う場合は、家事事件手続法に定める手続による必要があります。

戸籍上の夫婦間の子である「嫡出子」の親子関係を争う方法として、嫡出否認と、親子関係不存在という類型が定められています。

 

嫡出否認は、原則として、子を懐胎した母の夫、つまり戸籍上の父親のみがすることができます(民774条)。

また、嫡出否認の訴えは、子の出生を知ったときから1年以内にしなければなりません(民777条)。

 

親子関係不存在確認は、請求者は利害関係のある者に限られるものの、期間制限はありません。

 

2種類の手続が用意されていますが、嫡出推定(民772条)がはたらく場合には嫡出否認によらなければなりません。

その他の場合は、親子関係不存在確認によることとされています(大審院昭和15年9月20日判決)。

 

4 親子関係不存在確認による場合

このように、嫡出推定が働くかどうかが、厳しい期間制限が課されるか否かを分けることになるため、重要になります。

嫡出推定が働かない場合を、以下の3つの場合に整理することができます。

 

(1)推定されない嫡出子

嫡出推定の要件は「婚姻中に懐胎した子」(民772条1項)です。

「懐胎」であって「出生」ではないことに注意が必要です。

外部から明確に判別することができる「出生」と異なり、「懐胎」の日を特定することは困難を伴います。

そこで、民法は「婚姻成立の日から200日を経過した後…に生まれた子は、婚姻中に懐胎したものと推定する。」(民772条2項)と定めています。

これによって、懐胎の日を特定することなしに、婚姻成立日から出生までの期間のみによって婚姻中に懐胎した子であることが推定されることになります。

この二つの推定によって、簡易的に嫡出子として法律上の親子関係が認められています。

 ① 婚姻後200日以内に子が出生した⇒婚姻中に懐胎した (民772条2項)
 ② 婚姻中に懐胎した⇒嫡出子 (民772条1項)

 

ところで、婚姻後200日以内に子が出生した場合、①の推定がされません。

その結果、②の嫡出が推定されないことになります。

特に、未熟児で誕生する場合など、懐胎から200日以内に子が出生したが、事実、婚姻後に懐胎したことは間違いないケースでは、嫡出推定がなされないことになってしまいます。

このような場合でも、医学的に婚姻中に懐胎したことが証明される場合は、①の推定なしに②の嫡出が推定されると考えられています。

 

しかし、婚姻期間中の懐胎が証明できない場合は、嫡出が推定されません。

戸籍実務では、婚姻中に出生した場合、それが婚姻200日以内であっても嫡出子として取り扱うものとされています。

このようにして、嫡出は推定されないが嫡出子としては取り扱われる「推定されない嫡出子」という概念が生まれることになります。

このような子は、法的な親子関係があるという法律関係を前提に扱われることになります。

親子関係の存在について異論がある場合は、嫡出否認ではなく親子関係不存在確認によって争う(大審院昭和15年9月20日判決)こととされています。

 

(2)推定の及ばない嫡出子

民法の嫡出推定は、2段階となっています。

① 婚姻後200日以後に子が出生⇒婚姻中に懐胎した (民772条2項)
② 婚姻中に懐胎した⇒嫡出子 (民772条1項) 

婚姻成立日から出生までの期間のみから、機械的に、嫡出が推定されることになります。

しかし、婚姻後200日以後に出生した場合でも、外観から見て親子関係が存在するはずがないという状況にあった場合は、嫡出推定が排除されるものと解されています。

例えば、長期にわたる刑務所への収監や出征、遠隔地に居住し性的関係を持つ機会がなかった場合などが該当すると考えられています。

これは、あくまで外観から明白である場合に限って、ごく例外的に嫡出推定を制限するものです。

 

なお、結果的に生物学的に血のつながりがないことは、嫡出推定の問題とは関係しません。

血のつながりがない以上、夫婦の性交渉の結果として子を授かったのではないことが明らか。だから嫡出推定を排除する――という理屈は成立しないことに注意が必要です。

 

(3)嫡出推定の要件を欠く場合

嫡出推定が成立するための要件は、対象となる子が「妻が婚姻中に懐胎した子」(民法772条1項)であることです。

妻でない女性が懐胎・出産した子が夫婦の子として戸籍上記載されている場合は、「妻が婚姻中に懐胎した子」にあたりません。

このような場合、そもそも嫡出推定の要件を満たしていませんから、嫡出否認の対象になる余地がありません。

<例>
子に恵まれない夫婦が、他人の生んだ新生児を引き取って実子として届け出ていた場合。(いわゆる「藁の上からの養子」)

<例>
新生児が取り違えられてしまい、二組の夫婦がそれぞれ別の夫婦の子を実施として届け出ていた場合。

このような場合、嫡出子として届け出られているため、(1)の場合と同様、法的な親子関係があるという法律関係を前提に扱われることになります。

そして、親子関係の存在について異論がある場合は、嫡出否認ではなく親子関係不存在確認によって争うこととされています。

 

5 まとめ

このように、親子関係の存否が争われる場合、生物学的な親子関係がないことまで突き止められていることが多いといえます。

そのような場合、嫡出推定が及ぶと、法律的な親子関係を否定する機会が著しく制限されることになります。

事実を突き止めても、話し合いだけでは解決できず、法律の壁が立ちはだかる場面の一つといえるでしょう。

親子関係に関する争いは、離婚に伴う場合と相続に伴う場合とで様相がかなり異なります。

事実関係と法律関係を解きほぐし、的確に整理する必要がありますので、お困りになったらお早めに弁護士にご相談することをお勧めします。

(弁護士:小原将裕)

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