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企業としてパワハラ防止法にどのように対応したらよいですか?

  • カテゴリー:中小企業法務 コラム
  • 2022.06.02

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企業法務について、素朴な疑問から専門的な論点まで、弁護士が解説いたします。

Q パワハラ防止法が改正され、中小企業も法的義務が課されると聞きました。何をどのように対応したらよいですか?

A 大きく分けて4つあります。形だけの対応ではなく、専門家と相談して体制を整備することが重要です。

<Point>
○大きく分けて4つの対応として、①事業主の方針等の明確化、周知、啓発、②相談体制の整備、③パワハラ発生時の迅速かつ適正な対応、④これらと併せ講ずべき措置、が挙げられる。
○単に窓口を設けるだけでなく、人材の育成が必要。とりわけ②③は、本格的に取り組むためのリソースが必要。
○企業規模によっては外部の専門家を活用して整備を進めることも検討する。


≪解説≫

2022年4月から、パワハラ防止法に基づき中小企業にもパワハラ防止措置に対応することが義務付けられました。

中小企業の経営者の皆様は、防止措置の整備は進んでいらっしゃいますでしょうか。

防止措置の整備に着手していない方も、検討しているものの何から手を付けてよいかわからない方も、ポイントを整理しますので、一つ一つクリアして万全の対応を進めていただければと思います。

1 なぜ、パワハラ防止法に対応することが重要なのか

パワハラ防止法自体には罰則はありません。

しかし、企業としてのパワハラ対応が不十分ですと、民事上の責任を問われる可能性があります。

なにより、パワハラを放置してしまうと従業員の生産性が低下したり、優秀な人材が流出してしまいます。

ひとたび悪評判が立ってしまうと、採用段階から敬遠されてしまいます。

従業員のコンプライアンス意識も変わってきていますから、パワハラ対策は業績に結び付く、無視できないものとなっています。

法律による義務化を機に、見直しをすることが重要なのです。

2 パワハラ防止法が求める企業が講ずべき措置とは

パワーハラスメント防止指針によれば、企業が講ずべき措置として、次のものが示されています。

① 事業主の方針等の明確化、周知、啓発
 ・パワハラを行ってはならないという方針の明確化、周知、啓発。
 ・加害者には厳正に対処することの明確化、対処の内容を就業規則等に規定、周知、啓発。
② 相談体制の整備
 ・相談窓口を予め定めて周知する。
 ・窓口の担当者が適切に対応できるようにする。
③ パワハラ発生時の迅速かつ適正な対応
 ・事実関係を迅速かつ正確に確認する。
 ・事実確認ができた場合は被害社員に対する配慮の措置を行う。
 ・事実確認ができた場合は加害者員に対する措置を適正に行う。
 ・再発防止に向けた措置を講ずる。
④ これらと併せ講ずべき措置
 ・プライバシーを保護するために必要な措置を講じ、周知する。
 ・相談したこと等を理由として不利益な取扱いをされない旨を周知・啓発する。

それぞれ、具体的にどのようにしていけばいいのか、順番に解説します。

3 ①事業主の方針等の明確化、周知、啓発

まず、企業としてパワハラをなくすべきだという方針を明確に打ち出します。

これを周知、啓発する方法としては、ハラスメントに関連する情報を朝礼で取り上げたり、研修を実施することが考えられます。

社内で実施することが大変な場合はや社労士や弁護士に依頼をすることも考えられます。

意識の醸成には時間がかかりますから、継続していくことが大切です。

厚生労働省がマニュアルや社内研修資料を作成していますので、参考にするとよいでしょう。

○以下は厚生労働省HPへのリンクです。
労働者の皆さまへ ハラスメント防止のためのハンドブック(平成30年9月作成) [PDF形式:1,555KB]
社内研修資料「職場でのハラスメントの防止に向けて」(平成30年8月作成)[PDF形式:694KB]
管理職向け「職場のハラスメント対策セミナー関係資料」[PDF形式:1,968KB]

こうした企業としての方針を明確にすることに加え、パワハラの禁止、およびペナルティなどの対処について社内規定を整備する必要があります。

懲戒処分を念頭に置けば、就業規則にその旨を定めることになるでしょう。

就業規則を改訂した場合は、やはり従業員に周知、啓蒙する必要があります。

4 ②相談体制の整備

ハラスメント相談窓口を設置し、社内に周知することが法律上、企業に義務付けられています。

相談窓口としては、社内の人事部などから担当者を選任する、弁護士や業者に委託する、これらを併用する方法が考えられます。

窓口の連絡先は社内に周知する必要があります。

パワハラは人間関係があれば常に発生するリスクがありますので、周知は一度きりではなく、長期的・継続的に行うべきです。

 

また、窓口を設置するだけでは足りず、担当者が適切に対応できるようにすることも必要です。

担当者が不用意な対応をしてしまうと、ハラスメントの解決どころか、企業とのトラブルを発生させてしまいかねません。

したがって、社内で担当者を決める場合は、形だけの窓口設置にとどめず、対応についても十分に指導する必要があります。

事実関係のヒアリング方法や、共感を示した対応など、弁護士が普段取り扱っている相談と共通する点が多いため、協力を仰ぐことも有用だと思われます。

5 ③パワハラ発生時の迅速かつ適正な対応

パワハラに該当する可能性のある相談がなされた場合、事実関係を迅速かつ正確に確認する必要があります。

相談者、行為者のほか、第三者からも事実関係を調査することがあります。

メールや録音、その他物的証拠があるかも確認します。

言い分に食い違いがあったり弁解がある場合は、その裏付けを進めていくことになります。

 

調査の結果、事実確認ができた場合は被害社員に対する配慮の措置、加害社員に対する措置を適正に行うことになります。

被害社員に対する配慮の措置としては、配置転換などによって接点をなくしたり、メンタルヘルス不調への対応としては産業医などに意見を求めることもあります。 

加害社員に対しては、ハラスメントの内容に応じて、注意・指導や就業規則に従った懲戒処分、謝罪をさせるなどの処分を検討することになります。

 

パワハラに該当する可能性のある相談がなされた場合、結果としてパワハラと認定するか否かを問わず、再発防止に向けた措置を講ずる必要があります。

ハラスメント発生事例として共有したり、該当社員を研修に参加させることが考えられます。

事案によって、パワハラに該当しない場合であっても、当事者同士を隔離したり注意・指導を行うことも検討することになります。

6 ④これらと併せ講ずべき措置

そのほか、プライバシーを保護するために必要な措置を講じ、周知する必要があります。

特に、相談内容の秘密を保持すること、相談をしたことにより不利益な取り扱いを受けないようにすることは不可欠です。

調査の過程で、必要以上に相談内容を開示してしまわないよう、プライバシーに対する意識を徹底することが求められます。

 7 最後に

管理部門がある企業であれば、内部で担当者を選定しやすいと言えます。

しかし、企業規模によっては担当者の選定が容易でない場合があります。

また、担当者に適切な対応をさせるための指導・教育にかかるコストも無視できません。

当事務所は、事実関係のヒアリングや顧客対応の経験豊富な弁護士が所属しており、企業の外部窓口として活用していただくことも可能です。

コンプライアンス意識の高まっている状況で、適切に法令を順守することとは企業のリスク回避、従業員の安心感にもつながります。

ご関心がありましたらお気軽にご連絡ください。

(弁護士 小原将裕)

まずは、お気軽にご相談ください。

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